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星の子プロダクション社長のブログ
毎日、自作絵のアップ

2019年4月6日( 土 )

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「日光江戸村 似顔絵話 その14」(作 秋久幸士)

江戸村で働いていた人たちは、皆さん気さくで良い人たちだった。仕事は一生懸命やるが、オープン前やお客様がいなくなった閉村の頃は皆んなで楽しく雑談した。
ある日、お客様がほとんど帰ってしまった閉村の間際、お化け屋敷の前を通りかかると、屋敷の従業員さんから笑顔で「絵描きさん、お客もいないし内に入っても良いですよ」といってくれた。「ゲッ、どうしよう」私はいやな顔もできないし「ああっそうね」彼からは善意以外の何ものも感じられなかった。しょうがない、断るのも悪いし「ありがとうございます、じゃあ入らせてもらいます」と言ってしまった。「しまった」 場内はぜったい誰も居ない、私一人だ。お化け屋敷内で気を失ったら誰も助けてはくれない。行き倒れか? 朝までお化けと一夜? でもしょうがない、困惑を隠して、平気な顔で館内へ入る。
当然真っ暗、何にも見えない。「ぴゅーーーーーーっ」おきまりのバックグラウンド。「ドンッドンッドンッドンッ!」使い古された効果音。「プッシューッ!」いきなり自転車がパンクしたような風が吹く。居酒屋の赤提灯が足元にも及ばない強烈な赤い光光光っ。なにやら毛の生えたスイカのような丸い塊が前の方で出たり入ったり、あるいは綱渡り。私は進みたいのだが暗くて何も見えない「ここは何処?私は誰?もう出たいです、出られない? 早く出たいです! 出してください!」声に出しても誰も聞く人も居ない。私以外人間は誰も居ないのを知っている。もう出口方向の壁をぶちこわして突進したいくらいだ。だめだだめだ、こらえてこらえて。よしよし、良かった、まだ理性が残っているぞ。えらい!少し落ち着け。まだ先があるぞ、あんまり歩いてないような気がする。ここは競馬場で言うと第何コーナーあたりか? 分からない。まずい、足が震えてきた。幸い床は平らだ。これで床に何か細工されて、揺れたり穴を掘れたりした事にゃーもうどうしようもない、あっちの世界に行っちゃう。
まだ俺は歩いているぞ、倒れていない、ざまあみろだ。おっとっとっ、ここは美術館か? 現代アートか? ピカソの絵か? あるいはデフォルメか? やられた! 私には描けない。何でそんなに赤をいっぱい使っているの? その赤どうにかしてくんない? 可愛いピンクかなんかに変えてくれない? だめ? 話しても分かってくれるようなやつらじゃない。そこだ、そこが一番怖いんだ。なんだ? 何で上から色んなもんを垂らすんだ? 止めてくれ! じゃまなんだ! 歩きにくいんだ! 顔にかかって前が見えないじゃあないか。もう私は足元しか見てない。とにかく無事生還すれば良いんだ、それだけだ。急げ! でもこの方向で良いの? もしかして本当のお化けの世界に入ってしまっているのではないか? その可能性も何パーセントかあるような気がして来た。いやっ、いやっ、しっかりしろっ、妄想に負けてはだめだ。「事実唯真」「お化けなんか居やしない」そうだ、こんな時には歌だ。歌を歌おう。「北国の青い空〜 流れる雲 はるか〜」。 少し勇気が湧いてきたぞ。今度は笑って歩こう「アッハッハッハッ」。いいぞ! なんか楽しくなってきた。「オッス」お化けに挨拶なんかしちゃってる。どうだ俺は強いぞ!「ワッハッハッ」
おやっ? なんかあっちの方角にかすかに光が見えるぞ。光明だっ! あそこだ! あそこが出口だ! やった! やりました。えっへっへっ、なーんだこんなもんかい? たいしたことないなあ。私は江戸の町に無事戻ってきました。
がっ誰も居ない! あたりはかなり暗い。シーーーーンッ。「えらいこっちゃっ、ここは何処?私は誰?」ドキドキドキッ。ここは江戸村か? はたまた知らない世界か?
居たっ!さっきの従業員さん。よかった、平気を装い「ありがとうございました」とだけ言いました。しかし「またお願いします」とは私は言いませんでした。
(続く)

  1. 2019/04/06(土) 19:06:43|
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